ジザメリ,サイコキャンディ再現ライブアルバム発売へ(+レビューあり)

The Jesus and Mary Chain(以下ジザメリ)は今年7月31日,ファーストアルバム Psychocandy (1985年) の再現ライブの模様を収めたレコード2枚とCD1枚,40ページの本をまとめた豪華パッケージ "Live At Barrowlands" をリリースする.各英字メディアが報じている(例えばここ参照).

年内にはCDのみでのリリースも予定されているとのことで,多分そちらの方がお財布には優しいだろう.

収録されているのは昨年11月に英スコットランドのグラスゴーで行われた公演(セットリストなどは以前のエントリ参照)での演奏.そのうち,Psychocandy の再現部分については既に,LP "Barrowlands Live" として今年4月18日の「レコード・ストア・デー」に合わせてリリースされていた.私もこのLPを入手したが,ジザメリのファンにはお勧めできる.以下,このLPのレビューも含めメモ:

7月末に出る新しいパッケージでは Psychocandy の再現部分に加え,それ以外の楽曲(あの Upside Down を含む7曲)を演奏した部分も収録される.4月のレコード・ストア・デーにリリースされたLPよりも充実した内容で,ファンには非常に魅力的だと思う.

とはいえ,4月にリリースされたライブ盤LPは大変良かった.2007年のジザメリ再結成以降では最もノイジーかつ丁寧な演奏で,ノイズポップの金字塔,シューゲイザーの源流として30年後の今も高く評価されている Psychocandy の再現ライブをとても大事なものと見なして準備してきたことがうかがえた.

代表曲だがノイジーではない1曲目の Just Like Honey が終わると,2曲目の The Living End からノイズが入り出す.この曲の演奏は Psychocandy に入っている原曲よりも迫力があって楽しめた.

このライブ盤全体を通して言えることだが,ノイズ以外の部分の音量がしっかりある.ともすると高音域のノイズばかりが強いことがある Psychocandy 収録の原曲に比べ,今回のライブでは中音域のギターの元々の音が大きめに鳴り,バランスが取れているように思った.

The Living End の後は間髪入れず,たたみかけるように,同じくノイジーな3曲目 Taste the Floor になだれ込む.ライブならではのスリリングな展開で,聴いていてワクワクさせられる.

4曲目の The Hardest Walk は07年のジザメリ再結成後しばらくしてからセットリストに入るようになり,08年の来日時には単独公演で披露していた曲.今回の Psychocandy 再現ライブではよりノイジーになっている.

静かな5曲目 Cut Dead を挟み,80年代中盤のジザメリ初期のライブの定番曲だった 6曲目 In a Hole が演奏される.これが今回のライブ盤の一つのハイライト.速いテンポで攻撃的なこの曲で,ここまでで一番強く多様で大きいノイズが頻繁に鳴らされる.その場にいたら耳栓がほしくなるかもしれない.

7曲目 Taste of Cindy は再結成後の様々なライブで披露されてきた曲だが,The Hardest Walk と同様,今回のライブではノイジーさが増している.それにしても最後の歌詞 "Knife in my head is the taste of Cindy" を聞くたびに天才を感じてしまう.この曲でLPのA面は終了.

B面の1曲目はリリース当時のようにノイズまみれにアレンジされた Never Understand. こちらも再結成後のライブでは定番曲だったが,Psychocandy の頃をこれほど再現したことはなかった.とてもノイジーで満足のいく仕上がりになっている.

B面の2曲目は Inside Me, 3曲目は Sowing Seeds, 4曲目は My Little Underground.  Inside Me と My Little Underground は,原曲の方は密室で音を響かせているようなダークでサイケデリックな印象が強いが,今回のライブでの演奏は音響やボーカルの声の出方から,どちらかというと Automatic 以降のジザメリのように比較的ストレートでとっつきやすくなっているように感じた.それでもノイズもしっかり入っていてコアなファンも納得できる仕上がり.原曲の良さを損なったというよりは,良さを引き出したと評価するのが適当なように思った.

5曲目は再結成後の定番曲 You Trip Me Up. こちらもこれまでより大幅にノイジーになっている.間奏部分にもっとノイズがほしいような気もしたが,ノイジーなのにとてもポップな原曲の魅力が生きていて全体的に良かった.

B面の6曲目 Something's Wrong は元々 Psychocandy の中でも聴きやすいポップな曲.この再現ライブでもノイズはあまり前面に出ないアレンジになっている.

最後の曲 It's So Hard では狂乱的な金切りノイズを乗せた迫力のある演奏を楽しむことができ,締め括りにふさわしい.短いのが玉に瑕で,もっと引っ張って堪能させてほしい気がしてしまう.ただ,元々短い曲なので仕方がない.

なお,このLPについて,日本語では既にこちらのブログに良いレビューが出ている.→ 2015年4月18日のレコード・ストア・デイ。その13。ジザメリ『Psychocandy-30th Anniversary Live 』 - 音楽と本を軸に回る僕のライフ。

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