ダークな中に美しさが光る-レヴォネッツ5作目,ファンにおすすめ

デンマーク出身の男女ロックデュオ,The Raveonettes(ザ・レヴォネッツ)の5枚目のフルアルバム "Raven in the Grave" が今月発売され,早速購入した.前作とは打って変わって今回の作品ではダークな曲調が目立つほか,ややリバーブの効いた音響には高音のシンセの効果でどこかひんやりした感触が加わった.その中で,オールディーズを思わせるお得意の激甘ポップメロディーに乗せた歌が切なさをかき立てるという独特の魅力的な音世界が展開されている.ノイジーなところも少しだけある.以下,非常に簡単な感想をメモ:

レヴォネッツは「デンマークのThe Jesus and Mary Chain(以下ジザメリ)」とも呼ばれてきたし,確かにデビューアルバムはまるでジザメリのようだった.でも彼らはすでにそんな段階を通り過ぎてレヴォネッツならではのオリジナルな音楽を作り出している――.今回の作品を聴いて,そんなことをあらためて感じた.

前作 "In & Out of Control" (2009年) でほぼ消滅したジザメリ風ノイズギターは今回のアルバムでもごく一部の曲で聞こえるだけ.1作目 "Chain Gang of Love" や3作目 "Lust, Lust, Lust" にあったようなノイズまみれの曲はない.また,全体的に楽曲のテンポは落ち,これまでのようなキャッチーな曲は少なくなっている.その分,彼らのつくり出す素晴らしいメロディーや音響を堪能できるところがある.

1曲目の "Recharge & Revolt" がこのアルバムで一番キャッチーでなじみやすい.レヴォネッツらしいレトロなビートの上にMy Bloody Valentineを思わせるギターが乗り,そこに "Disintegration" の頃のThe Cureが使っていたような高音シンセがかぶさって,このアルバムの音を早くも決定付けている.興味のある方には,まずはこの曲を試聴してみることをおすすめする(PVはここ参照).

この曲の次に一般に親しみやすそうなのが先行ダウンロード曲の3曲目 "Forget That You're Young"(私はPitchforkのこの記事からダウンロードした).ミッドテンポのポップナンバーで,前作の先行ダウンロード曲だった "Last Dance" に通じるところがあるように思う.

5曲目の "Summer Moon" と9曲目の "My Time's Up" はスローテンポの曲だけど,レヴォネッツらしい極限まで甘い黄金のポップメロディーがダークな音響の中で響き,物悲しくもドリーミーで美しい名曲に仕上がっている.個人的には,この2曲がアルバムのハイライトかなと感じた.

ほかには,2曲目の "War in Heaven" で復活したギターノイズを聴くことができる.ただ,シンセの音があるためか,ノイズはそれほど印象的でない.4曲目の "Apparitions" はまさにThe Cureの "Disintegration" を彷彿とさせるダークで繊細な曲.一方,比較的アップテンポの7曲目 "Ignite" はDum Dum Girlsを思い起こさせる感じがした.

今回のアルバムは全体的に暗くて.一般にはあまり受けないかもしれないけど,確立されたレヴォネッツらしさのある美しい作品だと思う.これまでに彼らの音楽を聴いて好きになった人には是非おすすめしたい.

レヴォネッツ公式サイト: www.theraveonettes.com
レヴォネッツのMySpace: www.myspace.com/theraveonettes
レヴォネッツのTwitter: twitter.com/theraveonettes

レヴォネッツについての以前のエントリ:
ジザメリファンにレヴォネッツ!(07年7月26日)
レヴォネッツ3枚目もジザメリファンにおすすめ(09年3月20日)
レヴォネッツ4作目はノイズが抜けポップに(09年10月19日)

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