エンブレルなどの安全性めぐる情報のアップデート

若年性関節リウマチ(JRA,別名・若年性特発性関節炎=JIA)の治療にも使われる生物学的製剤(抗サイトカイン薬)のうち,「TNF阻害薬」であるインフリキシマブ(商品名レミケード),エタネルセプト(商品名エンブレル),アダリムマブ(商品名ヒュミラ)など5種類について「小児,青少年が2年半使用した場合に悪性腫瘍(がん)の発症リスクが上昇する」とする米食品医薬品局(FDA)の情報(8月19日のエントリ参照)について,日本小児リウマチ学会のウェブサイトに10月6日付でフォローアップの情報が掲載されている:

小児リウマチ学会ニュースレター第6報

FDAの当初の情報では,これら5種の薬を使用した小児・青少年の中で,これまでに悪性腫瘍の発症者が48人確認されているとされる一方,発症率(全部で何人のうちの48人なのか)は明らかにされていなかった.

小児リウマチ学会が今回,その後のFDAの追加情報を和訳して公開したところによると,小児悪性腫瘍の発症率は▽レミケードが2万2645患者年(投与年齢0~16歳・投与期間2003~07年)のうち15人(つまり少なくとも5661人中15人)▽エンブレルが2万6800患者年(投与年齢0~17歳・投与期間1998~07年)のうち6人(つまり少なくとも2977人中6人)──だったとのこと.

上に書いた母数(「つまり少なくとも~人中」の「~人」の部分)は,全員がこの投与期間を通じてレミケードまたはエンブレルを投与されたと仮定して私が計算した理論上の人数で,実際にはもっと多いはず.FDAの追加情報には,レミケードを投与された0~18歳の患児は08年2月までで1万4837人,エンブレルを投与された0~17歳の患児は07年12月までで9200人とのデータも示されている.

また,JRAに限ると,悪性腫瘍が報告された「リウマチ性疾患」の患児の数はレミケードを投与された患児で5人,エンブレルを投与された患児で14人とのこと(上で挙げた発症率のデータとの整合性が素人の自分にはさっぱり分からないけど,そう書いてある).

あと小児リウマチ学会によれば,9月20日現在,日本国内でこれらの薬による小児の悪性腫瘍発症例は報告されていないとのこと.

以前の関連エントリ:
免疫抑制剤と抗サイトカイン薬の情報メモ(07年8月31日)
エタネルセプト問題報道メモ(07年12月10日)
若年性関節リウマチ(JRA)関節型用の生物製剤メモ(08年2月2日)
エンブレル効能に若年性関節リウマチ(JRA)追加(09年7月15日)
エンブレルなどの安全性めぐる新情報(09年8月19日)

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